シンガポールにおける会計事務所の役割と守備範囲

シンガポールで一般的な”会計事務所”と、日本で言う”会計事務所”とは実は大きく異なります。この違いについて意外とわかりにくいものなので解説をしてみたいと思います。一番重要・大きな違いは、シンガポールで必須の「セクレタリー機能」です。

1.日本で言う会計事務所とは?

まずは日本で一般に認知されている会計事務所というと、会計・税務サービスを営むのが会計事務所です。大抵、会計士がいて、税理士がいて、アシスタントがいて・・・というイメージですね。主な業務は、月次、年次の会計や決算をまとめること。そして法人であれば年間の法人税の計算と申告、納税の手伝いを行います。また、法人・個人のいずれも源泉徴収や消費税の対象となる場合、こうした税金の計算と申告も重要な業務の一つです。会計事務所の中でも守備範囲が広いところは、経営戦略・事業戦略も含めた様々なコンサルティングを提供していたり、あるいは社労士事務所も兼ねていることもよくあります

こうした日本での一般的な会計・税務業務は、シンガポールの会計事務所でも同じく営まれています。では当社を始めとする「シンガポールにおける会計事務所」とは、どんな業種で、どんな違いがあるのでしょうか?

2.シンガポールにおける会計事務所:セクレタリーファーム+会計事務所

シンガポールにおいては、全ての会社(Private Limited)はコーポレートセクレタリー(Corporate Secretary、Company Secretaryとも呼ばれる)という役職者を選任することが法律で義務付けられています。このコーポレートセクレタリーは会社の議事録作成・保管、登記事項の管理を担う役割になり、登記簿上にもその個人名が掲載されるなど、会社の役職者として就任することになります。

ただ、このコーポレートセクレタリーは社内で社員として抱えているケースはよほどの大企業にならない限り少なく、ほとんどの会社がこのコーポレートセクレタリーおよびセクレタリー関連業務をサービスとして提供している「セクレタリーファーム(Secretary Firm)」に依頼をしています。このセクレタリーファームは通常、会計・税務事務所としての機能も兼ね備えており、会社の設立登記から始まり、決算や株主総会、税務といった会社の設立・維持管理の大部分をカバーしています。※当社、シンガ・カンパニー・サービスもセクレタリーファーム兼会計事務所で、会社設立・維持・管理、会計・税務・労務・ビザと幅広くカバーしています。説明が長くなっていまうので、普段は会計・税務事務所で登記もやっています、と説明しております。

このコーポレートセクレタリーですが、役職ですので登記簿に記載される個人になります。一方実態は、セクレタリーファームとして、サービス会社がセクレタリー機能を担い、その統括者がカンパニーセクレタリーとなることが多いです。コーポレートセクレタリー、あるいはセクレタリーファームの主な業務は以下のようになります。

    • コーポレート・セクレタリーの就任(登記簿に名前が載り、会社の登記について一定の責任を負う)
    • 会社の登記全般(会社の設立、取締役や株主の変更など各種会社の詳細変更、定款の変更届け出)
    • 議事録の作成と管理(取締役会・臨時株主総会議事録の作成、管理、保管)
    • 年次株主総会書類の作成と運営サポート(取締役会・株主総会議事録の作成、管理、保管、株主総会の必要決議事項の指導)
    • その他会社の法規制に関わるサポート(CPF(日本で言う社会保障費や年金と同じ位置付け)や政府機関への届け出等)

このシンガポール法人で必須のセクレタリー機能と、日本の会計事務所機能が合体したものが、「シンガポールにおける会計事務所」、ということになります。

3.セクレタリーファームとは?

日本では聞き慣れないコーポレートセクレタリー(短くセクレタリーと呼ばれることが多い)ですが、シンガポール法人では法律上必須になり、会社設立後6ヶ月以内にシンガポール内に居住するセクレタリーを専任する必要があります。登記を司るポジションということもあり、会社設立時点でセクレタリーを提供できる能力のあるセクレタリーファームに依頼し、設立と同時にコーポレートセクレタリーを選任するのが通常です。

セクレタリー選任後は、取締役会と株主総会の議事録はセクレタリーファームに依頼をして作成することになり、込み入った案件(例えば重要な資産の譲渡で条件が色々付与されているケースなど)は弁護士とセクレタリーで連携をして作成することも多くあります。

法人の、法的な詳細が変更されるとき、例えば増資をするような場合、取締役会や株主総会で適法に意思決定がなされることは極めて重要です。もしそこでミスがあると、後々大問題になりかねません。そのため、セクレタリーのような専門家により適切な議事録を作成し、各意思決定機関が決議を行い、再度セクレタリーがチェックをした上で登記をします。

こうした重要な機能を担うため、公開会社の場合、セクレタリーになるためには要件があります。以下はACRA(会計企業規制庁)のウェブサイトからの抜粋です。

    • Qualified person under the Legal Profession Act (Cap. 161)
    • Public accountant registered under the Accountants Act (Cap. 2)
    • Member of the Institute of Certified Public Accountants of Singapore
    • Member of the Singapore Association of the Institute of Chartered Secretaries and Administrators
    • Member of the Association of International Accountants (Singapore Branch)
    • Member of the Institute of Company Accountants, Singapore.

ざっくりとまとめると、弁護士、公認会計士、公認セクレタリー、といった有資格者で十分な経験を積んだ者、となります。これは非公開会社には法的には強制されないのですが、実は非公開会社であっても変わらない要件、と言って差し支えありません。前述のように、法律や議事録、登記に関する実務を詳細に知っていないとできない仕事のため、こうした要件を満たしたセクレタリーを専任することが重要になります。

シンガポールの法人運営では、セクレタリーの知識・経験も活用しながら、適法に意思決定機関(取締役会、株主総会)を運営し、また報告・登記をする必要があるのです。
会社としての専門性があるかどうかの最低要件の一つに、Registered Filing Agent(RFA、認定登記サービス)というライセンスがあります。これはACRAから発行されているライセンスで、一定の経験を積んだ上で、試験に合格をして初めて発行されるものです。またこのRFAライセンスは永年有効ではなく、2年おきの更新となっているため、ライセンス更新時に少なくとも最低限の知識更新をする必要がある、という仕組みです。セクレタリーファームを選ぶ際においても、RFAライセンスの有無は一つの基本確認事項となろうかと思います。

4.シンガポールの会計事務所機能のまとめ

一言で言うと、「日本の会計事務所の役割 + セクレタリー機能:登記、議事録の作成と管理、法規制に関わるサポート」となります。かなり守備範囲は広いため、経験豊富なセクレタリーを専任すると、会社運営の心強いパートナーとしてサポートを得られることとなります。

法人の設立のときは通常、全面的にセクレタリーを頼ることとなります。必要書類の確認、作成サポート、設立する法人の内容の相談、などがセクレタリーの果たす役割です。設立が終わり、事業を軌道に乗せるまでの間は往々にして会社の法的詳細(例えば資本金や住所等)を変更することも多くあります。更には、事業が拡大するとまた節目として会社の内容が変わってくるため様々な決議や登記も増え、、、と、セクレタリーの重要性も上がっていきます。ガッチリ一緒に会社を運営していけるパートナーとしてのセクレタリーを専任することは、会社経営自体にも影響を及ぼす重要事項になります。

5.当社シンガ・カンパニー・サービスの場合

最後に、当社 シンガ・カンパニー・サービスの場合、以下のようなサービスをご提供しております。

    • コーポレートセクレタリー
    • 会計
    • 税務
    • ビザ申請
    • 顧問契約での諸々サポート

セクレタリーとしての会社設立・法人登記業務においては、定時株主総会、取締役会といった諸々の基本的な会社法や登記に関連する業務にとどまらず、スタートアップ(ベンチャー企業)のファイナンスに絡む実務も手掛けているなど、込み入ったケースも対応しております。

加えて、会計事務所としての月次・年次決算や税務業務はもちろんのこと、CPFやビザ申請も主な業務として多くのクライアント企業をサポートしております。スピーディかつ柔軟な対応をモットーにしておりまして、顧問契約では諸々の”よろず相談”をお受けしております。多いのは銀行関連のご相談や国をまたいだ取引の組み方の相談などです。ワンストップで広くカバーできる体制を整えておりますので、何か当社でお手伝いできること、お手伝いできそうなことがあれば、お気軽にお問い合わせ下さい!