シンガポールでの会社設立の流れと要件【2023最新版】

シンガポールは、海外の企業が進出しやすいインフラの整備を国策として進めています。日本人を含む外国人であっても100%株式保有ができるなど、シンガポールでの会社設立は「外国人フレンドリー」な状況になっています。 

とはいえ、シンガポールにとっては外国人である日本人が会社を設立して事業を行うには、さまざまな検討事項があり、注意が必要です。シンガポール政府や銀行が求める要件をクリアし、適法に法人を設立できるよう準備を進める必要があります。

本記事では、シンガポールでの会社設立の流れと要件について、一挙にすべてご説明します。

シンガポールで会社設立をする流れと要件

シンガポールで会社を設立する流れは、以下の通りです。日本における会社設立を経験した人でも、シンガポールでは日本と異なる要件や手続きがあるので、注意が必要です。流れに沿って、詳しく見ていきます。

シンガポールでの会社登記の流れ

はじめに:セクレタリー・ファームと契約する

シンガポールでの会社設立にあたっては、専門知識を要するセクレタリー・ファーム(会社秘書役事務所とも呼ばれます)に依頼するケースが一般的です。セクレタリー・ファームというのは、シンガポールでは一般的な、「会計事務所と司法書士事務所がくっついた業態」で、会計、税務、法務の専門会社です。会社設立の際は、まずセクレタリー・ファームと契約することがその第一歩となります。

この会社設立を担当したセクレタリー・ファームが、会社設立完了後にそのまま「カンパニー・セクレタリー」を提供する場合が大半です。

シンガポール法人における「カンパニー・セクレタリー」とは?

会社の議事録作成・管理、登記を担う、シンガポール会社法上の役割を担う人を「カンパニー・セクレタリー(コーポレート・セクレタリー)」といいます。シンガポールの全ての会社は、法人設立から6か月以内に、カンパニー・セクレタリーを任命する必要があるのです。 

カンパニー・セクレタリーはシンガポール国内に在住しており、会計士あるいは弁護士等の有資格者や経験と知識を保持した者であることが求められます。

1. 設立する企業体のタイプを選ぶ(株式会社がベスト)

セクレタリー・ファームと相談しながら、いよいよ会社設立を始めます。

シンガポールで設立する企業体のタイプは、「株式会社」「支店」「駐在員事務所」の3つの選択肢があります。

      • 株式会社:日本の法人と同じく独立した法人格であり、制限なく事業活動ができる。シンガポールに存在する法人のため、シンガポール税制に従う
      • 支店:外国法人の一部とみなされるが、制限なく事業活動ができる。ただし、法人格がシンガポールにないため、本体の外国法人の税制に従うことになる
      • 駐在員事務所:リサーチのために設立することが認められている特殊な組織。外国人が駐在できるようにするための組織だが、販売や営業はできない

    シンガポール移住を前提とした場合であれば、シンガポールに株式会社を設立する選択肢がベストです。日本で会社を経営している人は、シンガポールに「支店」をもつことを考えるかもしれません。実は、「株式会社」と「支店」は法律上大きく異なり、支店ではシンガポールのメリットが取りにくくなります。

    シンガポール支店はシンガポールで一旦納税をした後、再度日本の本体に合算をした上で日本の税制が適用され、差額を収めることになります。つまり、日本で法人を持っているのと全く変わりません。更にはどんなに小さな支店であっても、監査法人の監査が必要になり、シンガポールおよび日本の税務申告・納税の対応が複雑になるなど、管理コストは支店の方が株式会社よりも多くかかりがちです。

    駐在員事務所に至っては、事業活動自体ができない組織になり、売上を計上することが一切できません。従って、地方銀行の出先機関でリサーチ目的で設立するなどの特殊な事情が無い限り、メリットが無い組織となります。

    上記のように、支店や駐在員事務所では、多くの人にとってシンガポール移住の重要目的のひとつである税優遇が得られません。また、シンガポールの国策で会社設立と維持が外国人であってもやりやすいように制度設計がされているため、税務と管理コストの観点の両方で、「多くの場合で株式会社(法人)設立がベスト」となり、それ以外の選択肢は考えなくても良い場合が多いです。

    2. 企業名の準備をする

    会社設立に向けて、以下の流れで、セクレタリ・ファームの協力をもらいながら会社名を確保します。

    希望する会社名を考える

    念のため、第一希望から第三希望まで3つくらいの準備しておくことが望ましいです

    簡易チェックを依頼

    セクレタリー・ファームに依頼して政府のデータベースに照会してもらい、取れそうな社名を簡易チェックしてもらいます

    確保する社名を決定

    現存する、あるいは過去にあった社名と近い社名、不適切な社名、法律で保護されている文言を含むなど、当局から否認されそうな社名でないことを確認し、確保する社名を決めます

    社名の仮登記

    ACRA(Accounting & Corporate Regulatory Authority:企業会計庁。日本で言う法務局)へ登記し、会社設立まで社名を仮確保します。最大60日ほど確保できるので、その間に会社設立を完了するようその後の手続きを進めます。

    なお、時折、仮確保ができている社名でも、会社設立登記を提出した段階でACRAから社名の審査が入ることもあり、会社名を確定できるのは法人登記が認められた瞬間、となります。

    3. 設立する会社の登記住所の準備をする

    設立する法人の登記住所は、シンガポール国内である必要があります。そうすると、会社設立前にシンガポールでオフィスを借りて登記しよう、とお考えになる方もいらっしゃいます。

    ところが、シンガポールは家賃が高額なため、会社設立のタイミングでオフィスを借りることは大きな負担になります。会社を設立しても実際に事業を開始し、顧客を獲得し、売上が入ってくるまでは相応の時間がかかるものです。事業が軌道に乗るまでの間、空に近いオフィスに多額の賃料を支払うのは事業の開始時にはおすすめできません。 

    そこで、会社設立当初は「登記住所貸しサービス」を利用し、郵便物の受け取りも当該サービスに依頼することができます。こうしたサービスはセクレタリー・ファームが提供しており、会社設立を依頼するセクレタリー・ファームの住所を借りるケースが多いです。

    その後、事業が順調に成長すれば、オフィスを借りるタイミングで登記住所を移すこともできます。初期は登記住所を借り、大きくなってきたらオフィスを借りてコストを抑え、効率よく事業を立ち上げていくことが可能です。 

    オフィスを借りる際は、シェアオフィスなども選択肢になります。シンガポールでは、日系・ローカル系・グローバル系、様々なシェアオフィスがあり、選択肢も豊富です。

    なお、小規模なビジネスを行う場合は、自宅住所を登記住所にすることも可能です。ただし、賃貸物件では家主が法人登記住所に使用することを認めない場合が多いので注意しましょう。

    4. 設立する会社の事業内容を決める

    次に、シンガポールで設立する会社の主たる事業内容を決めます。なお、内外資を問わず、事前にライセンスを取得する必要がある事業があるので、注意が必要です。こうしたライセンスは、業種によって管轄する官庁が異なります。意図せず違法にビジネスを始めることにならないよう、規制産業についての綿密なリサーチが必要となります。例えば、食品、医療、メディア関連事業はシンガポールでは規制が厳しい産業のひとつです。

    事業内容が決まったら、SSICという産業種別コードと、登記簿謄本に載せる簡単な事業内容の記述を決定します。日本のように定款に行う事業の全てを列挙しないと行けない、といったことは無いため、重要な事業内容の記載と最も近いSSICを選べれば十分です。SSICは、補助金の申請における産業判定などにも使われるため、まず実態に一番近いと思われるものを選び、そのうえで会計事務所などに相談するのがよいでしょう。若干の手続きが必要になりますが、後日変更をすることも可能です。

    なお、シンガポールローカルの株主がいる場合(例:シンガポール人が株を30%以上保有している会社)などでは、税優遇される業種もあります。その際は、優遇業種のSSICを選ぶ必要があることを理解しておいてください。

    5. 設立する会社の資本金・株主・取締役を決める

    資本金、株主、取締役には、それぞれシンガポールの法定要件があるので注意が必要です。また、この3要素は会社設立時のデザインとして最も重要な要素で、会社設立後に続く銀行口座開設や就労ビザの申請にも影響を及ぼすことがあります。

    資本金

    法律上は1ドルからの会社設立が可能です。しかしながら、資本金が低い会社は、その後のプロセスで以下のような問題が起きやすいので、低すぎる資本金額での会社設立は避けるべきです。

      • 法人口座開設が銀行に却下される:銀行の立場になると、あまりに資本金が少ないため、会社運営に株主がコミットしておらず良からぬことに会社を使われるリスクがあると判断される場合や、銀行での取引額が低くビジネスにならないと判断される場合があります
      • 就労ビザがシンガポール政府に却下される:
        就労ビザ申請において、資本金が低い会社は事業活動を精力的に行う気がない、あるいは外国人雇用を許可しても事業を維持する財務体力がない、とみなされて却下されることが往々にしてあります

    こうした銀行口座開設やビザ取得といった重要イベントを見越すと、どのような会社であっても、資本金として最低5万SGD(約500万円)を設定することをおすすめします。

    会社設立時は最低限の資本金にしておき、後から増資することもできます。この場合、会社設立が終わった後、増資の株主総会、増資後の登記といった事務手続きが追加で生じます。書類の準備がやや煩雑なのと、各種法定書類の準備や登記に事務手数料がかかってしまうため、会社設立時に必要な資本金がはっきりしていれば、最初からその資本金で会社を設立してしまって問題ありません。

    株主

    最低1名以上の株主が必要です(個人、法人ともに可)。シンガポールの会社法では、外国資本による資本金規制はなく、100%外資(例えば日本人・日本法人が100%株式を保有)で会社を設立できます。

    ただし、アンチマネ-ロンダリングや脱税防止のための規制強化により、法人株主が入ると会社設立及びそれ以後の手続きが複雑になる傾向があります。これは、「法人の実質的支配者(Beneficial Owner)」は個人でしかあり得ないと考えられるため、法人株主の株主の個人を調べる、という必要が発生するためです。セクレタリー・ファームにおいても、ACRA(企業会計庁)からの規制を受け、設立する法人の実質的支配者を確認・調査する義務があります。銀行も同様で、こうした確認事項が飛躍的に膨らむこととなるため、法人株主が入る際には心して臨む必要があります。

    取締役

    シンガポールでの会社設立においては、常時1名以上の取締役が必要です。取締役は、18歳以上であれば外国人でも就任できます。ただし、取締役のうち1名は「現地取締役」であることが求められます。

    例えば、日本人・日本法人が100%株主となって会社を設立すると、日本の場合は株主の方が取締役となれば済みます。ところが、シンガポールで日本人は現地取締役になれないため、日本人取締役+現地取締役(シンガポール国民もしくは永住権保有者)の体制が必要です。

    シンガポール会社設立の重要要件である「現地取締役」とは?

    シンガポールの会社法上、全ての法人に対して1人以上の現地取締役(ローカル・ダイレクター)がいることが会社設立及び維持の法定要件になっています。現地取締役に就任ができる条件は、シンガポールに住所を持っていること、シンガポールに長期滞在できるステータスがあること、です。そのため、シンガポール人、シンガポール永住権保有者、外国人で就労ビザを当該法人に雇用される形で取締役に就任した人、の3パターンがありえます。

     なお、就労ビザについては、法人を設立した後に申請をすることとなるため、法人の設立前に外国人が現地取締役に就任することはできません。従って、会社を新しく設立する際には、シンガポール国民またはシンガポール永住権保有者に取締役に就任してもらう必要があります。

    日本人がシンガポールに会社を設立しようとすると、現地取締役になってもらえるシンガポール人やシンガポール永住権保有者を見つけることが難しいため、こうした現地取締役をサービスとして提供するセクレタリー・ファームと契約して進めることが多くあります。なお、このサービスはあくまで要件クリアを目的とする名義貸しであるため、事業には一切関与せず、事業には責任を持たない契約を結ぶのが通例です。

    現地取締役は、知人のシンガポール人に依頼することもできますが、会社の取締役というポジションになる以上、ビジネスに対する相応の知識や理解が必要です。知識や理解不足の場合、お互い大きなリスクになりかねないため、セクレタリー・ファームの名義貸しサービスを利用するケースが大半です。

    なお、国を問わず、過去に犯罪(含む脱税や法律違反)などの履歴がある人は、一定期間は会社の取締役には就けません。日本で事業をやりにくくなったので、外国であるシンガポールに会社設立をして事業をやろうという考えは通用しないので、注意が必要です。

    6. 会社設立に向けた各種書類を準備する

    設立する会社の概要が固まったら、書類を準備し始めます。

      • 株主・取締役が準備をする書類
        各種申請書や宣誓書の作成とサイン、全株主と取締役のパスポートコピーや住民票の準備、そうした書類への有資格者の認証追加などがあります。こうした書類の準備には、2〜3週間はかかると見込んでおくとよいでしょう。
      • 定款の作成(セクレタリー・ファームが作成)
        セクレタリー・ファームが準備をする重要書類の一つに定款があります。新法人の定款は、ACRAの標準定款を用いるか、あるいは標準定款を若干修正して使用することが多いです。オリジナルの定款を使いたい場合は、基本的な定款を作成して法人設立を完了し、後日修正・差し替えるとされているケースがあります。(優先株の発行を伴うケースなど)
        ちなみに、シンガポールでは定款に書いていない事業はやってはいけないということはありません。日本では全事業を定款に書く必要があり、書いていない事業は営むことができませんが、シンガポールでは、新事業が加わったとしても定款や登記簿謄本への記載を毎回変える必要はないのです。

    7.  シンガポールで設立した会社をACRAへ登記する

    書類が整ったら、ACRAへ法人登記を行います。シンガポールでは登記作業はWeb上で完結します。会社設立も同様にWeb上で手続きができ、問題がなければ手続き完了をしたその日に登記完了通知が得られます。設立の登記簿謄本に相当する「Business Profile(略してBizfile)」やACRAより発行される「UEN(シンガポール法人登記番号)」の通知も、全てWebサイト、メールを通じて取得・受信します。

    時折、ACRAへの提出後、審議になることがあります。この場合、ACRAからの受理の連絡を待つこととなるため、数日から長いと2−3週間待たされることもあります。ランダムに審査が入っているようで、事前に確認をすることができません。

    多くの場合は即時受理、となります。この法人登記が受理されれば、晴れてシンガポール法人の設立完了、一つの区切り、となります!このあとはいよいよこの会社を使ってのビジネス開始の準備へと移って行きます。

    シンガポールで会社設立をした後にやること

    法人登記を終えた後は、ついに法人を使った作業を進めることができます。銀行口座の開設やビザ取得を始め、やるべきことがまだまだあります。設立後こそ重要なタスクが多いので、気を抜かずに手続きを進めましょう。

    1. 会社設立取締役会の開催

    初回の取締役会を開き、会社の詳細確認、取締役やカンパニー・セクレタリー(会社秘書役)の選任、監査人の選任、決算期などを決議します。通常は取締役会議事録はセクレタリー・ファームが作成し、取締役決議をその書面上で済ませます。実務的には、会社設立時点ですでに全ての詳細を決めておく必要があるため、会社設立当日か、その前に決議書類を準備することも多くあります。

    カンパニー・セクレタリー(会社秘書役)の選任

    カンパニー・セクレタリーの任命期限や要件は、冒頭「カンパニー・セクレタリー」とは?」で説明した通りです。カンパニー・セクレタリーには、会社定款、株主総会議事録、ACRAへの法定申告書類等の作成と、そうした法定書類の保管業務、加えてこれらの法定の手続きの監督が義務付けられています。

    監査人の選任

    シンガポールでは、原則監査を受けることが法律上定められており、会社設立から3か月以内にシンガポールでの監査資格をもつ会計監査人を選ぶ必要があります。原則監査が不要な日本とはルールが異なるので注意しましょう。なお、この監査人の選任においても、セクレタリー・ファームに相談することが通例です。

    ただし、シンガポールにおいても小会社の場合は監査が免除されます。総資産1,000万SGD(約10億円)、売上1,000万SGD、従業員50人の3要件のうち、2つを満たすと監査対象となるとされました。これはグループで判定されるため、子会社の場合は要注意です。例えば、総資産1,100万SGD相当、売上500万SGD相当、従業員が60人のグループに属するシンガポール法人は2つ要件を満たすので監査対象になります。逆に、総資産200万SGD相当、売上 1,200万SGD、従業員40人のグループの場合は監査が免除されます。

    現実的には、当初の資本金が1,000万SGDを超えるような大資本で設立される、あるいは大企業の子会社として設立されない限り、設立時点では監査が免除されるケースが多いといえます。

    2. 新設法人の銀行口座開設

    新設された法人の取締役が銀行に必要書類を提出し、銀行の法人口座開設手続きを行います。 シンガポールでは銀行での法人口座開設の審査が年々厳しくなっているので、この手続きを甘く見ないようにしましょう。例えば、日本のようにふらりと銀行に立ち寄って口座開設をする、、、ということはほぼ不可能です。

    日本人はシンガポールでは外国人で、警戒されていると考えて良いです。また日本人がシンガポールに来た直後にシンガポールの銀行の状況を踏まえた対応をするのは難しいため、実際は、セクレタリー・ファームなどが法人銀行口座の開設をサポートすることが大半です。

    事務的な手続きとしては、会社の諸々の情報や、個人(株主・取締役全員)のパスポートや住所証明といった個人情報、事業に関する情報など多くの情報を提出します。手続き後、口座開設完了までは2〜3週間。込み入ったケースだと3〜4か月かかることもあることを見込んでおきましょう。

    法人株主が入る場合の銀行口座開設は難しい??

    新設した会社に法人株主が入っていると、銀行口座の審査が大幅に厳しくなります。これは、銀行がマネーロンダリング(資金洗浄)や犯罪関連資金などの疑いがある取引を防ぐため、口座開設に関してより慎重に審査を行うためです。

    法人(端的には会社)というのは、誰か個人が背後にいて成立するものです。株主や何らかの影響力を行使する人がその「支配者」となります。「シンガポール法人 ← 法人株主」、という形で保有されている場合、実際には、「シンガポール法人 ← 法人株主 ← 支配している個人」という支配関係があると見られ、シンガポール法人の審査時に、法人株主、そしてその法人株主の支配個人(一般的には株主)までチェックされることになります。

    このように、法人株主は、企業の経営に対して影響力を持つことができるため、シンガポール法人に対しても実質的な支配者として、その法人を不正な目的に使用させることもできる、と見られています。結果、銀行は新設の法人とその法人株主(つまり親会社)だけではなく、その法人株主(親会社)の株主に対してまで審査を行うことになります。この場合、親会社としての会社の審査に加え、親会社の株主個人、親会社の取締役、、、と審査・書類提出の範囲も広範になることが通常です。

    ただし、法人株主が入っているからといって必ずしも銀行口座の審査にマイナスに働くだけではありません。銀行は、口座開設に際して企業の業績や信用情報などを総合的に判断し、審査を行います。従い、親会社が信頼性の高い会社の場合(上場企業や世界的に知られている会社など)、むしろ銀行からの信頼を得ることができる場合もあります。

    法人株主が入る銀行口座の開設は端的に言うと難しい、あるいは審査の手間がかかるものですので、心して掛かりましょう。

    口座開設後は、インターネットバンキングも開設し、デビットカードも発行できるのが通例です。シンガポールの銀行は、インターネットバンキングが充実しており、外貨送金のコストが比較的安く、かつ簡単に行えます。また、デビットカードにはVisa/Masterがついているので、普通のクレジットカードのように使えます(ただし即時引き落としになります)。

    3. 資本金の払い込み

    シンガポールでは、会社設立が終わった後、銀行口座ができ次第、資本金を振り込みます。日本と資本金払込のプロセスが異なり、日本のように会社設立前に払い込み、銀行から“払込証明”のような書類を取る手続きはありません。

    本来、登記簿に記載されている資本金は設立日に会社名義のお金として存在している必要があります。ただ、実務上銀行口座が無いため、口座開設を待っていたという状況になっています。こうした状況自体が法律上グレーな状況にあるため、銀行口座開設後、即時の入金がベストです。早く振り込むようにしましょう。どのような事情があっても、口座開設から1か月以内の振り込みは必須と言えます。

    4. 各種書類への会社名・登記番号の記載義務

    会社設立後、法人に対してUEN(シンガポール法人登記番号)が発行されます。UENは、会社が発行する全ての公式書類、営業資料、契約書や請求書などに、正式な会社名とUENを明記することが法律で義務付けられています。

    UENは法人固有の番号であるため、契約主体が誰なのかを特定する上で、UENは非常に有効です。特にインボイスや契約書には忘れずに載せましょう。

    5. 就労ビザの申請

    会社の取締役を含め、シンガポールで外国人が就労するには、就労ビザ(Employment Pass、EP)を取得することが求められます。会社設立が完了すれば、現地で就労する日本人の就労ビザ申請が可能となります。帯同する家族は、EPに付帯する形での扶養家族ビザ(Dependant’s Pass、DP)を申請します。

    EPの発行可否は、給与、職歴、年齢など様々な要素で決まりますが、近年は発行要件が厳しくなっています。外国人がシンガポール人の雇用を奪っているというシンガポール人の主張が年々強まり、政府もEP審査を年々厳格化して行っています。そのため、最近の事例をよく知っているセクレタリー・ファーム等と相談して申請準備を進めるのが望ましいです。

    シンガポールでの会社設立に必要なお金と書類

    シンガポールで会社を設立するにあたっては、さまざまなお金と書類の準備が必要になります。あらかじめ心づもりをしておきましょう。

    会社設立に向け準備するお金

      • 会社設立時の費用
        • セクレタリー・ファームとの契約料
        • 会社登記料
        • カンパニー・セクレタリー、および取締役に支払う費用
        • 自分と家族のビザ申請料
        • オフィス契約にあたっての敷金、仲介手数料(最初から借りる場合)
      • 新設した会社の資本金
        • 従業員の給料(資本金から払うことになります)
        • 会社設立後の運営費用
    資本金とは:株主が払い込み、会社のものとして事業に使えるお金

    資本金とは、会社を設立する際に株主たちが出資するお金で、株主たちは資本金に応じた出資を行い、出資したお金は会社の資産として扱われます。そのお金は会社の所有物となるため、資本金を使って事業を行います。

    設立直後はこの資本金が重要な運転資金になり、会社の事業拡大(人の採用や広告)や設備投資を行う場合、資本金を使って費用を支払い、物品の購入や投資を行うことができます。

    資本金は、会社が設立時に株主が出資するお金であり、設立直後は資本金以外の資産が無いため、その額によって企業の信用力や財務基盤の強さが決まります。そのため、銀行が法人口座開設をすべきかどうかの審査をする際にも、重要な要素として見られることになります。

    会社設立の必要書類

    以下がシンガポールでの法人設立に求められる、必須情報・書類の概要です。実際に準備が必要な書類や情報は、会社の建て付けや状況、セクレタリー・ファームによっても異なるため、別途ご確認ください。

      • 会社設立
        • 全株主と取締役のパスポートコピーや住民票
        • 諸々のフォーム:連絡先情報や個人情報の提出
        • 諸々の宣誓書:取締役が過去5年間に有罪判決を受けていない、提出した情報が真正なものであることなど
      • 銀行
        • 事業に関する情報
        • 会社設立時に必要になる書類・情報
      • ビザ申請書類
        • 申請者の職務経歴書
        • 個人のバックグラウンド情報:学歴、過去の収入、宗教、過去入国に問題があったかなどを示す書類など

    シンガポールでの会社設立での注意点

    外国人がシンガポールで会社を設立するには、さまざまな注意すべき点があります。最初に適切な設計で会社を設立しておかないと、後々問題が起きやすく取り返しがつかない場合もあるため、「とりあえず設立」は避けて、入念な設計に基づき会社設立を進めていきましょう。 

    具体的には、以下の点において注意が必要です。

      • すべての手続きを外国語である英語で進める必要があり、正しい理解に基づいて手続きを進めるだけでも難易度が高い
      • 銀行口座開設の審査は、特に外国人に対しては厳しい。銀行との審査対応を自分でハンドリングできる自信がなければ、サポートしてくれる人が必要
      • 就労ビザ(EP)審査はシビア。特に一度却下されると、よほど状況が大幅に変わらない限り、再申請をしても難しい。あらかじめEPが承認される確度が高くなる設計で会社を設立し、ビザ申請がスムーズになるようにしておくべき

    こうした問題を避け、注意すべきことに適切な注意を向けて会社設立を進めることが肝要です。

    ご自身に豊富な知識があり、英語で手続きやコミュニケーションができる、あるいは社内にそうした対応ができる人材がいるのであればローカル会社を使って低コストで行う選択肢もあります。実際には、日本人がシンガポールでの法人を設立するのは簡単には進まないため、多くの場合で日本語での対応が可能な日系セクレタリー・ファームなど、手厚くサポートしてくれる会社が現実的な解決策となっているようです。

    シンガ・カンパニー・サービスによる会社設立サポート

    当社シンガ・カンパニー・サービスでは、シンガポールにおける会社設立の全てをお手伝いしています。会社設立のご相談から法人登記後の銀行口座開設までを包括的にサポートする「シンガポール会社設立パッケージ」もご提供しています。

    当社は設立以来9年に渡り、日系クライアントに幅広い会社設立・会社維持・シンガポール移住にまつわるサービスをご提供してきました。代表者はシンガポール在住10年超の永住権保有日本人であり、シンガポール人会計士や各分野の専門家が在籍している会社です。

    現地でのサービス提供を通じて磨き上げてきた会社設立・会計・税務の豊富な専門知識と、現地に張り巡らせたネットワークにより収集可能な、リアルタイムの現地情報が当社の強みです。コミュニケーションは全て日本語で進められます。 

    初回のご相談(30分程度)は無料で対応しており、Zoomなどでお話しさせていただきます。会社設立やシンガポールでの会社運営をご検討の方は、問い合わせフォームよりお問い合わせください。